コラム - 犬のおはなし -
ワンちゃんに与えてはいけないものの代表的なものはネギ類やチョコレート類などです。それは皆さんもよくご存知のことと思います。
もちろんそれ以外にも与えてはいけないものはたくさんありますが、その中で意外と知られていないのが「ぶどうやレーズン」です。原因ははっきりとわかってはいないのですが、ぶどうやレーズンを大量に摂取すると急性腎不全に陥ることがあり、ひどい場合には亡くなってしまうことがあるとの報告も!!では大量というのはどのくらいの量なのでしょうか。
体重1kgあたり10~30gを摂取するといわゆる「中毒症状」が起こると報告されています。これはけっこうな量ですから、1~2粒食べたところで心配があるわけではありませんが、与えないに越したことはないでしょう。ぶどうよりもレーズンの方が良くないと言われているので、皮に含まれる成分や付着しやすい何かが影響しているのではないかと思われます。どうしてもあげたい場合は皮をむいてあげるべきでしょうが、そんな危険?なものを何もわざわざあげる必要はないですよね。
難産の判断と帝王切開に踏み切るタイミングを見極めることはとても重要です。もちろん本来は自然分娩が望ましいのは当然のことですが、それを望むあまりタイミングを逸して胎仔を救えなくなってしまうことは絶対に避けなければなりません。胎仔が産道を通過出来る大きさで、産道が開いているにも関わらず、陣痛微 弱のため自力での娩出が困難な場合は陣痛促進剤を1回投与して様子をみますが、20~25分経過しても胎仔が娩出されなければ帝王切開を決断すべきでしょう。
基本的に、いったん陣痛が始まれば、いつ娩出されてもいい状態と考えられるため、自然分娩でいくべきか、帝王切開にすべきか迷ったときには、帝王切開 に踏み切る方がうまくいくケースが多いようです。
早すぎる帝王切開よりも遅すぎた帝王切開の方が胎仔死の可能性が高いからです。
写真はチワワの新生仔で す。帝王切開で無事に生まれました。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間に位置する二枚の薄い弁(左房室弁または僧帽弁といいます)がしっかり閉じなくなり、心臓が収縮する際に全身に拍出されるべき血液の一部が弁の隙間から左心房に逆流する状態をいいます。この結果、左心房圧および肺静脈圧が上昇し、肺における血流のうっ滞が起こります。さらにこの状態が続くことにより心臓のポンプとしての働きが低下し、心不全に陥ってしまいます。小型の老齢犬に多く見られますが、症状が明らかになってからでは治療がうまくいかないこともあるので、若いうちからしっかりとした身体検査を定期的に受けておくことをおすすめします。基本的にこの疾患は慢性変性性疾患なので、症状が明らかになる以前に何らかの徴候(聴診による心雑音の聴取など)をキャッチすることが出来れば(いわゆる早期発見が出来れば)落ち着いた治療計画がたてられます。せめて1年に1回以上、例えばフィラリア検査時などにしっかりした聴診を受けるべきでしょう。必要に応じて心電図 検査・レントゲン検査・エコー検査を追加していけばいいでょう。写真は咳・運動不耐性・呼吸困難をきたした僧帽弁閉鎖不全症の犬のエコー写真です。僧帽弁 (黄色の矢印)がうまく閉じないために左心房(ピンクの矢印)がかなり拡張しています。
胸腺腫は心臓の前方に存在する胸腺(胎生期における最初のリンパ性器官)が大きくなったもの(腫瘍化したもの)で、中年以降の犬猫他にみられる比較的まれな疾患です。呼吸が荒い、咳が出る、などといった症状で胸部レントゲン検査やエコー検査を受けた時に前胸部に塊状物が存在していた場合はまず胸腺腫を疑いますが、リンパ腫との鑑別が重要になるので、細胞診は必ず実施すべきです。この時に成熟したリンパ球と胸腺上皮細胞を認めることにより診断しますが、判断が困難なケースでは、全身のリンパ節のチェックおよび肝臓や脾臓の細胞診を行なうこともあります。胸腺腫とリンパ腫ではそもそも治療方法が異なるので、事前の鑑別診断はしっかりやっておかなければなりません。胸腺腫は外科的切除、リンパ腫は化学療法剤による内科治療が中心になります。胸腺腫を切除するにあたって、事前にCT検査で肺や心臓との関わりを確認しておくことは有効です。また胸腺腫がかなり大きい場合は、放射線照射によりサイズを小さくしてから手 術に臨むこともあります。
ワンちゃんが誤って異物を飲み込んでしまう事故が起こったときの対処の仕方はいろいろありますが、強制的に吐かさせてよいケース、内視鏡を用いて取り出さねばならないケース、胃腸切開手術をして取り出さねばならないケースなど、何を飲み込んでしまったかによって選択する方法は大きく変わってきます。今回は薬を使って強制的に吐かさせる方法について述べてみます。
尖っているものや食道粘膜に強い刺激を与えてしまうものは吐かさせるわけにはいきませんが、布切れやビニール、あまり大きくないプラスチック、消しゴム、桃や梅干の種などは催吐剤を使うとうまく吐かさせることが出来ます。これらの異物はレントゲンに写りにくいので、飲んだことがわからないままだと後で腸閉塞を起こすこともあって大変危険です。
また別の目的物を吐かさせる処置時に一緒に出てきてビックリすることもあります。催吐剤としては、当院では小児用吐根シロップを好んで用いています。甘くておいしく、胃荒れを起こすことが少なく、気持ち悪い感じがあとをひかずに済むからです。他の催吐剤としては、水で1:1に薄めた過酸化水素や微温湯で溶かした食塩を胃チューブで強制投与する方法やトラネキサム酸の静脈注射などがあります。猫では、麻酔薬として用いる塩酸メデトミジンの筋肉注射で嘔吐を誘発させることが出来ます。いずれにしても誤飲させないような環境作りが重要なことは言うまでもありません。