コラム

2009年4月22日

20090422子犬に混合ワクチンを接種する時のプログラムは、まず生後2ヶ月で1回目の接種、1ヶ月あけて生後3ヶ月で2回目の接種をするのが一般的なやり方です。

生後2ヶ月くらいまでは、母犬からの移行抗体によって子犬は護られているので、よほどのことがない限り(例えばお産の時に初乳が飲めなかったとか・・・)、それ以前に混合ワクチンを接種する必要はありません。逆に言うと、2ヶ月齢以前に混合ワクチンを接種しても母犬の移行抗体によって打ち消されてしまうので、接種する意味がないということになります。また、この移行抗体は生後2ヶ月でパッとなくなるわけではなく、その子によっては2ヶ月半くらいまで持続することもあり、それを確認する ことは現場では出来ません。そういう子の場合は、生後2ヶ月で接種した混合ワクチンも打ち消されてしまっている可能性があります。生後3ヶ月で2回目の接種をするのは、1回目の接種が無効な可能性も考えてのことなのです(もちろん増強効果のためというのもあります)。

 

では、最初から、生後3ヶ月で1回目の混合ワクチンを接種すればよいのではないかと言われそうですが、それはかなり危険です。免疫が不十分な期間が確実に出来てしまうからです。いくら生後2ヶ月での混合ワクチンが無効になる可能性があるからといっても、その確率はかなり低いようなので、やはり基本的なプログラムにのっとって生後2ヶ月&3ヶ月での接種が推奨されるべきでしょう。

2009年4月8日

20090408モルモットの麻酔はかなり神経を使います。

事前に聴診などを主体とした身体一般検査を行なうほか、血液検査や心臓・肺の状態を見るためのレントゲン検査を行なう場合もありますが、それらが正常だからといって全く安心とは言えません。

 

犬や猫のように気管チューブを挿管して呼吸をコントロールすることがほとんど出来ず、手術中の麻酔維持はマスクをかがせて行なわねばなりません。さらに、犬猫なら、心電図・呼吸ガス・酸素分圧・血圧・体温などのモニター管理が可能ですが、モルモットの場合は心電図や体温くらいしかモニターが出来ないので、呼吸状態をしっかり目視していなければなりません。呼吸が停止してしまうよ うな深い麻酔は絶対にいけません。呼吸状態を目視するために、手術用のドレープを透明のビニール素材のものにするなど、いろいろ工夫が必要です。本当に神経を使います。

 

ですから、無事に手術が終了したときの安堵感や達成感は特別なものがあります。写真のモルモットは大きな乳腺腫瘍を切除しました。元気に退院してくれて本当に良かったです。

2009年3月24日

20090324太っている動物の開腹手術はとてもやりにくいものです。

切皮してから、ぶ厚い皮下脂肪をかき分けていくのですが、なかなか腹筋・腹膜に到達しません。写真は肥満のネコちゃんの開腹手術をしているところですが、皮下脂肪が3cmもあるので術野を確保するためには皮膚をかなり大きく切開しなければなりません。 やっと腹筋・腹膜に達しても、そこを切開した後、今度は大量の腹腔内脂肪と格闘しなければなりません。普通の体型のネコちゃんなら何でもないような簡単な手術も、肥満のネコちゃんとなると途端にやりにくくなり、リスクもずーっと高くなるのです。

 

また、単純に体重だけで麻酔量を決められないなど、他にも問題点はたくさんあります。肥満は、このように手術1つとってみても何もいいことはありません。しっかり体重コントロールをして適正な体型を維持することは、 動物にとってもとても重要なことなのです。

2009年3月13日

20090313激しい痒みで耳介が赤剥けてしまったワンちゃんが来院しました。

検査の結果、疥癬症であることが判明しました。「疥癬」とは一般的にヒゼンダニによる皮膚の疾患のことをいいます。特徴的な症状はとにかく痒くて痒くてたまらないこと。あまりの痒さに夜も眠れないことがあるほどです。

 

ヒゼンダニは、皮膚の柔らかい部分、肘・かかと・耳の先端などから侵入し、皮膚の角質に入り込んできます。産卵・交尾を繰り返し、皮膚の中でどんどん増えていきます。痒みの主な原因はヒゼンダニの分泌物に対する過敏症。アレルギーが起こってしまうというわけです。ただ、このアレルギーは発症するまでに時間がかかり、遅い場合は3~6週間かかることも。その間に他の犬や人間にうつってしまうことが多いので注意が必要です。確定診断はヒゼンダニを見つけることですが、問題は、角質(皮膚の奥)に入り込んだヒゼンダニを見つけるのが以外と難しいということです。皮膚をしっかり掻爬(削り取ることです)して顕微鏡で確認するのですが、数箇所から材料を採取しなければ見つからないことが多く、見逃してしまう可能性もないとはいえません。

 

疑わしいのに見つからない場合は診察のたびに何度も検査する必要がありそうです。治療は、卵からかえるヒゼンダニもきっちり駆除するために、一定期間かけて行なう必要があります。

2009年3月2日

20090302シーズーのワンちゃんの膀胱を切開して結石を取り出している写真です。

数ヶ月もの間、血尿になったり普通の色の尿になったりを繰り返していたそうですが、 以前から膀胱炎になったり自然に治ったりということがよくあったので、今回もまた飼主さんはついつい様子を見てしまったとのことでした。かかりつけの病院では、高齢で心臓疾患もあるこのワンちゃんの手術はちょっと難しいとのことで紹介されて当院に。

 

径3cmの大きさのものを筆頭に、数え切れないほどの結石を取り出しました。分析結果はリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)。感染症の管理と食餌管理で再発防止可能なものだったので少しホッとしま した。代表的な処方食としては、ヒルズのc/d、ロイヤルカナンのpHコントロールなどがあげられます。出来れば、ここまで問題が大きくなる前に(結石が出来る前に)定期的な尿検査や食餌管理で何とかしてあげたいものです。

尿検査は結石その他の問題だけでなく、腎臓の状態をみる上でもとても大切なので、定期的に実施することをおすすめします。尿検査は目的によって採取方法を選択する必要があるので詳しくは当院受付にてお尋ね下さい。