コラム

2008年2月15日

20080215前回の小欄で紹介した猫ちゃんの試験開腹手術の結果が出ました。

大網に包まれた塊状物を切除し割面を入れてみたところ(黒矢印)、中から出てきたものは何と小さな「ガーゼ」でした(黄矢印)。当院に来る前の野良猫さん時代に受けたと思われる不妊手術時に取り残されたものなのでしょうか。
もちろん他にも手術を受けていた可能性もありますし、今となっては想像でしかものを言えませんが・・・。

 

異物を完全に取り囲んで隔離する大網の能力・生体の見事な防御力に感動しながらも、反面とても悲しい気持ちになりました。私たち獣医師が診療を施す相手は物を言わない動物たちです。たとえどんな手術をしようと動物たちはけっして文句を言ったりしません。だからこそ、確実な処置が必要であるとともに防げるミスは絶対に防がなければなりません。この猫ちゃんに獣医師を代表して心からのお詫びを伝えるとともに今後の幸せな一生を願わずにはいられませんでした。

2008年2月1日

20080201健康チェックに来た猫ちゃんの腹部を触診したところ、直径2~3cmの塊状物が存在していることが判明しました。

レントゲン検査では石灰化した球状の塊状物が確認出来ます(矢印)。追加のエコー検査や消化管造影検査でその塊状物は腸管に存在しているものではないことが確認されましたが、それ以上のことは確定出来ません。猫ちゃん自身は食欲も元気もあり、一般状態も良好で、尿および血液検査結果も正常でした。実はこの猫ちゃん、もとは野良猫さんだったとのこと。飼い始める前のことはオーナーさんもよくわかっていないのです。

相談の結果、試験開腹をすることになりましたが、さて一体何が出て来るのでしょう か・・・報告は次回になります。

2008年1月21日

20080121緑内障は、眼内圧が上昇することにより一時的もしくは永久的に視神経が障害され、その結果として視覚を失う眼疾患です。最初のうちは羞明や結膜の充血などといった他の眼疾患でもよくみられる症状とあまり変わりがないので、家でついつい様子をみてしまうこともあるのですが、これはとても危険です。眼内圧の上昇が持続すると、激しい疼痛・赤目・瞳孔散大・角膜混濁を示すようになります。そして早い場合には2日くらいで失明してしまうことも・・・。このように経過がとても早いので、緑内障は診断した時点で残念ながら既に視覚を失ってしまっているケースもあります。

緑内障を早期に診断して視覚を維持するためには、家庭でのチェックが大事です。少しでも眼に異常を感じたら、様子をみずにすぐ病院へ連れて行くように心がけましょう。

2008年1月7日

20080107「ねずみ年」がスタートしました。ねずみは「げっ歯類」に属します。

今年はハムスターやスナネズミなどといったいわゆる「げっ歯類」を飼育してみようかなと思う方が例年より多くなるかも知れませんね。小さくて見た目も可愛いげっ歯類は広い場所を必要とせず、騒音や悪臭に悩むことも少なく、価格も手頃で飼育 も比較的難しくないために、初めて飼う方でもスムーズに入っていけるのではないでしょうか。ただし、げっ歯類のうちハムスターなどごく一部を除くと、その大半は野生動物であるという点に注意しなければなりません。

 

世の中の流行や外見の可愛さで衝動的に野生げっ歯類を飼うことはあまりおすすめ出来ません。概してペットとしての飼育の歴史が短い動物や、ペット以外の目的で飼育されてきた歴史の浅いもの、飼育頭数の少ないものに関しては、人獣共通感染症について全てわかっているとは言い難いからです。また、お店で扱っている全ての動物に対して獣医師が診療可能なレベルまで知識や技術を習得することは非常に困難であり、特殊なげっ歯類の場合は病気になってしまった時に診療が受けられないなどの悲劇が生じることも起こり得ます。

げっ歯類をペットとして飼う時は、飼育ノウハウがしっかりと広く一般に浸透しているもの、人獣共通感染症についてよく知られているものなどを選ぶべきでしょう。さらに、診療対象としている病院が近くにあるか否かなども考慮すべきでしょう。

2007年12月26日

20071226猫の膵炎は、犬の膵炎と比べると症状がはっきりしないものが多く、何となく元気や食欲がないといった主訴で来院した猫の検査を進めていくうちに、隠れていた膵炎が発見されることも珍しくありません。曖昧な症状のために様子をみてしまう飼主さんも多く、調子がガクっと落ちてから慌てて病院に連れて来るケースも・・・。

写真は、数ヶ月前から時々嘔吐が見られたが、2日前まで元気も食欲もあったという猫のレントゲン検査時のものです。胃腸にガスが充満し、腹腔内にも遊離ガスがみられます。穿孔による腹膜炎と診断し、緊急開腹手術を実施したところ、胃と十二指腸に穴が開いているのが見つかりました。何とか修復し一 命を取りとめましたが、運が悪ければ助からないところでした。慢性膵炎に気づかずに長いこと様子をみていたことが原因だったのです。猫の膵炎を診断するには、何気ない症状を軽視せず、血液検査・レントゲン検査・超音波検査などを組み合わせてしっかり行なう必要があります。

最近では「猫膵リパーゼ (f-PLI)」をIDEXX検査センターで測定してもらうことで、確定診断により一層近づけるようになりました。