コラム

2007年9月21日

20070921胸腺腫は心臓の前方に存在する胸腺(胎生期における最初のリンパ性器官)が大きくなったもの(腫瘍化したもの)で、中年以降の犬猫他にみられる比較的まれな疾患です。呼吸が荒い、咳が出る、などといった症状で胸部レントゲン検査やエコー検査を受けた時に前胸部に塊状物が存在していた場合はまず胸腺腫を疑いますが、リンパ腫との鑑別が重要になるので、細胞診は必ず実施すべきです。この時に成熟したリンパ球と胸腺上皮細胞を認めることにより診断しますが、判断が困難なケースでは、全身のリンパ節のチェックおよび肝臓や脾臓の細胞診を行なうこともあります。胸腺腫とリンパ腫ではそもそも治療方法が異なるので、事前の鑑別診断はしっかりやっておかなければなりません。胸腺腫は外科的切除、リンパ腫は化学療法剤による内科治療が中心になります。胸腺腫を切除するにあたって、事前にCT検査で肺や心臓との関わりを確認しておくことは有効です。また胸腺腫がかなり大きい場合は、放射線照射によりサイズを小さくしてから手 術に臨むこともあります。