コラム 2008年02月 の記事

2008年2月29日

20080229犬や猫における腸内寄生虫の代表的なものに「回虫」「鉤虫」「条虫」などがあります(写真は犬回虫卵)。いずれも動物の体に少なからず悪影響を及ぼします。特に成長期に濃厚感染を起こすと場合によっては命取りにもなりかねません。またこれらの寄生虫はいろいろな形で人間にも感染することがあり、むしろそのことに注意を払うべきかもしれませんが・・・。

 

ここで問題なのは、動物が寄生虫に感染しているか否かを検査する一般的な方法としての検便(直接法・浮遊 法・沈殿法・テープ法など)の精度です。残念ながら検出率は高いとは言えず、虫卵が見つからなかったからといってその結果だけをみて駆虫の必要なしと判断するのはとても危険です。また、検査精度の問題だけでなく、もし寄生虫に感染してしまったとしても通常の検査ではどうしても見つけられない期間(プレパテントピリオド)というものもあり、たまたまこの期間に検査を受けた場合は当然陰性と判断されてしまいます。この誤判定を防ぐ為には間隔をあけて数回の検便を繰り返すしかありませんが、それでも100%安心出来る訳ではないとしたら一体どうしたらよいのでしょうか。

 

そこで提案されたのが「定期的に駆虫する」 という考え方です。当院では、米国疾病管理予防センター・米国獣医寄生虫学会・英国小動物獣医師会が提案している駆虫ガイドラインに基づき、定期駆虫プログラムを推奨しています。詳しくは当院スタッフにお気軽におたずね下さい。言い忘れましたが、精度が高くないといっても検便そのものが必要であることに変わりはありません。目的の寄生虫の駆虫効果の確認のためはもちろんのこと、目的以外の寄生虫が偶然見つかることもありますし、その他腸内細菌の様子など、検便で得られる情報はとても貴重なのです。

2008年2月15日

20080215前回の小欄で紹介した猫ちゃんの試験開腹手術の結果が出ました。

大網に包まれた塊状物を切除し割面を入れてみたところ(黒矢印)、中から出てきたものは何と小さな「ガーゼ」でした(黄矢印)。当院に来る前の野良猫さん時代に受けたと思われる不妊手術時に取り残されたものなのでしょうか。
もちろん他にも手術を受けていた可能性もありますし、今となっては想像でしかものを言えませんが・・・。

 

異物を完全に取り囲んで隔離する大網の能力・生体の見事な防御力に感動しながらも、反面とても悲しい気持ちになりました。私たち獣医師が診療を施す相手は物を言わない動物たちです。たとえどんな手術をしようと動物たちはけっして文句を言ったりしません。だからこそ、確実な処置が必要であるとともに防げるミスは絶対に防がなければなりません。この猫ちゃんに獣医師を代表して心からのお詫びを伝えるとともに今後の幸せな一生を願わずにはいられませんでした。

2008年2月1日

20080201健康チェックに来た猫ちゃんの腹部を触診したところ、直径2~3cmの塊状物が存在していることが判明しました。

レントゲン検査では石灰化した球状の塊状物が確認出来ます(矢印)。追加のエコー検査や消化管造影検査でその塊状物は腸管に存在しているものではないことが確認されましたが、それ以上のことは確定出来ません。猫ちゃん自身は食欲も元気もあり、一般状態も良好で、尿および血液検査結果も正常でした。実はこの猫ちゃん、もとは野良猫さんだったとのこと。飼い始める前のことはオーナーさんもよくわかっていないのです。

相談の結果、試験開腹をすることになりましたが、さて一体何が出て来るのでしょう か・・・報告は次回になります。