コラム 2007年10月 の記事
難産の判断と帝王切開に踏み切るタイミングを見極めることはとても重要です。もちろん本来は自然分娩が望ましいのは当然のことですが、それを望むあまりタイミングを逸して胎仔を救えなくなってしまうことは絶対に避けなければなりません。胎仔が産道を通過出来る大きさで、産道が開いているにも関わらず、陣痛微 弱のため自力での娩出が困難な場合は陣痛促進剤を1回投与して様子をみますが、20~25分経過しても胎仔が娩出されなければ帝王切開を決断すべきでしょう。
基本的に、いったん陣痛が始まれば、いつ娩出されてもいい状態と考えられるため、自然分娩でいくべきか、帝王切開にすべきか迷ったときには、帝王切開 に踏み切る方がうまくいくケースが多いようです。
早すぎる帝王切開よりも遅すぎた帝王切開の方が胎仔死の可能性が高いからです。
写真はチワワの新生仔で す。帝王切開で無事に生まれました。
僧帽弁閉鎖不全症は、心臓の左心房と左心室の間に位置する二枚の薄い弁(左房室弁または僧帽弁といいます)がしっかり閉じなくなり、心臓が収縮する際に全身に拍出されるべき血液の一部が弁の隙間から左心房に逆流する状態をいいます。この結果、左心房圧および肺静脈圧が上昇し、肺における血流のうっ滞が起こります。さらにこの状態が続くことにより心臓のポンプとしての働きが低下し、心不全に陥ってしまいます。小型の老齢犬に多く見られますが、症状が明らかになってからでは治療がうまくいかないこともあるので、若いうちからしっかりとした身体検査を定期的に受けておくことをおすすめします。基本的にこの疾患は慢性変性性疾患なので、症状が明らかになる以前に何らかの徴候(聴診による心雑音の聴取など)をキャッチすることが出来れば(いわゆる早期発見が出来れば)落ち着いた治療計画がたてられます。せめて1年に1回以上、例えばフィラリア検査時などにしっかりした聴診を受けるべきでしょう。必要に応じて心電図 検査・レントゲン検査・エコー検査を追加していけばいいでょう。写真は咳・運動不耐性・呼吸困難をきたした僧帽弁閉鎖不全症の犬のエコー写真です。僧帽弁 (黄色の矢印)がうまく閉じないために左心房(ピンクの矢印)がかなり拡張しています。