コラム 2007年09月 の記事

2007年9月21日

20070921胸腺腫は心臓の前方に存在する胸腺(胎生期における最初のリンパ性器官)が大きくなったもの(腫瘍化したもの)で、中年以降の犬猫他にみられる比較的まれな疾患です。呼吸が荒い、咳が出る、などといった症状で胸部レントゲン検査やエコー検査を受けた時に前胸部に塊状物が存在していた場合はまず胸腺腫を疑いますが、リンパ腫との鑑別が重要になるので、細胞診は必ず実施すべきです。この時に成熟したリンパ球と胸腺上皮細胞を認めることにより診断しますが、判断が困難なケースでは、全身のリンパ節のチェックおよび肝臓や脾臓の細胞診を行なうこともあります。胸腺腫とリンパ腫ではそもそも治療方法が異なるので、事前の鑑別診断はしっかりやっておかなければなりません。胸腺腫は外科的切除、リンパ腫は化学療法剤による内科治療が中心になります。胸腺腫を切除するにあたって、事前にCT検査で肺や心臓との関わりを確認しておくことは有効です。また胸腺腫がかなり大きい場合は、放射線照射によりサイズを小さくしてから手 術に臨むこともあります。

2007年9月5日

20070905ワンちゃんが誤って異物を飲み込んでしまう事故が起こったときの対処の仕方はいろいろありますが、強制的に吐かさせてよいケース、内視鏡を用いて取り出さねばならないケース、胃腸切開手術をして取り出さねばならないケースなど、何を飲み込んでしまったかによって選択する方法は大きく変わってきます。今回は薬を使って強制的に吐かさせる方法について述べてみます。

尖っているものや食道粘膜に強い刺激を与えてしまうものは吐かさせるわけにはいきませんが、布切れやビニール、あまり大きくないプラスチック、消しゴム、桃や梅干の種などは催吐剤を使うとうまく吐かさせることが出来ます。これらの異物はレントゲンに写りにくいので、飲んだことがわからないままだと後で腸閉塞を起こすこともあって大変危険です。

 

また別の目的物を吐かさせる処置時に一緒に出てきてビックリすることもあります。催吐剤としては、当院では小児用吐根シロップを好んで用いています。甘くておいしく、胃荒れを起こすことが少なく、気持ち悪い感じがあとをひかずに済むからです。他の催吐剤としては、水で1:1に薄めた過酸化水素や微温湯で溶かした食塩を胃チューブで強制投与する方法やトラネキサム酸の静脈注射などがあります。猫では、麻酔薬として用いる塩酸メデトミジンの筋肉注射で嘔吐を誘発させることが出来ます。いずれにしても誤飲させないような環境作りが重要なことは言うまでもありません。