コラム 2007年01月 の記事
左眼の開きが悪く、眼球が引っ込んだ感じで瞬膜が突出し、下まぶたがやや下垂していました。また、右眼に比べると瞳孔のサイズが小さくなっていました。いろいろ検査した結果、この子は眼そのものの病気ではなく、ホルネル症候群という神経の病気であることが判明しました。
ホルネル症候群とは、眼およびその周辺への交感神経支配が消失(マヒ)することによって起こる障害のことです。
交感神経支配は、①視床下部から脊髄へ[中枢]②脊髄から頭頚部神経節へ[節前]③頭頚部神経節から眼とその周囲へ[節後]、といくつかのステップを踏んで神経支配をしています。
この交感神経支配のどの部位に病変が存在しても症状は現れますが、
①の[中枢]に病変がある場合(1次ホルネル症候群)は、脳血栓・脊髄疾患・腫瘍・炎症などが原因として考えられます。
②の[節前]に病変がある場合(2次ホルネル症候群)は、胸髄~頚部の内臓疾患、肺炎、リンパ腫などが原因として考えられます。
③の[節後]に病変がある場合(3次ホルネル症候群)は、中耳炎・眼窩腫瘍や膿瘍などの球後病変が原因として考えられます。
いずれにしても、根底にある疾患をしっかり治療すれば、いわゆる「変な顔つき」は元に戻ってくるはずですが、かなり時間がかかることもあるので、根気よく治療を続けることが大切です。
というのも、「これを実施すれば必ず治癒する」という根本的な治療法が今のところ確定していないからです。もちろん軽症の場合は、歯石を除去したり、ステロイド剤やその他ホルモン剤を投与することにより、良化することもあります。
しかし中等度から重度の症例では、それらの治療で一時的に良くなっても、すぐに再発してしまい、繰り返し治療を続けていかなければならず、猫と飼主さんにとってそのストレスは相当のものと言えそうです。
食欲はあるのに口の中が痛くて食べられないなんて、猫にとっては実に辛い事ですよね。
最近になって、この反応性の口内炎は、歯そのものが異物として反応しているのではないかという考えのもとに、臼歯を抜歯することにより良い結果が得られるようになってきました。
もちろん症状がひどければ臼歯以外も抜歯しますが、いずれにしてもこの抜歯療法は今の段階では根本的な治療法に一番近いものと考えられます。これにステロイド療法やホルモン療法を組み合わせたり、レーザーで潰瘍部分を焼烙したりすることも良いと思われます。写真の猫ちゃんもひどい口内炎に悩まされ続けていましたが、臼歯抜歯とレーザー治療でとても良くなりました。
何となく眼が開きにくく羞明がみられるとの主訴で猫ちゃんが来院しました。
角膜の光沢がやや消失している以外は特に目立った問題はないようでした。
シルマーティアテスト(写真)をしてみたところ、右眼が11mm、左眼が10mmでした。
だいたい15mm以上が正常ですから、この猫ちゃんは涙の産生量がやや少ないということになります。乾性角結膜炎(KCS)を疑って治療を開始したところ、眼の状態は落ち着いてきたのでとりあえず一安心。
KCSとは、涙液膜欠損のため角膜と結膜に乾燥や炎症を引き起こす疾患のことです。犬ではそれほど珍しい病気ではありませんが、猫で起こることはまれです。コンタクトレンズを使用している方ならば、眼が乾燥気味の時の不快感はよくおわかりですよね。日々の管理も大変ですし、結構やっかいな病気なんですよ。
それにしても、こんなにおとなしく検査させてくれる猫ちゃんは珍しいかも・・・。
今年も、動物を愛する全ての人々にとって素晴らしい年となりますよう、心からお祈り申し上げます。さて、今年は、かねてからの念願だった「箱根駅伝」を生で観戦することが出来て、もう興奮と感動で胸が一杯です。西出身の私にとって、「箱根駅伝」はテレビの中でしか観ることの出来ない特別なものでしたから。ところで、約20kmのアップダウンのある大変なコースを走る選手たちをみていたら、ペース配分がいかに大切かということをすごく考えさせられたような気がします。
振り返ってみると、塚越動物病院に勤務が決まってから今年で4年目になりますが、今までは常に最初から「猪突猛進」のスタイル(笑)?でがむしゃらに突っ走っていたため、いつも最後のほうはやや息切れ気味になっていたような気が・・・。イノシシ年の今年だからこそ、あえて猛進せずに、余裕を持った後半勝負型に路線変更してみようかな、なんて思っちゃったりもしました。仕事にも勉強にも、ペースを守って落ち着いて取り組んでいく大切さをあらためて思い直させてくれた、各校の選手たちにすごく感謝したい気持ちで一杯です。
一生懸命頑張りますので、本年もどうぞよろしくお願い致します。