コラム 2006年08月 の記事
耳を痒がる、頭を頻繁に振る、耳がくさい、耳の中が赤い、黒っぽい汚れや茶褐色の汚れが出る、 といった症状がみられる場合は外耳道炎が強く疑われますから、なるべく早めに診察を受けるようにしましょう。 外耳道炎は、清潔にすればすぐ良化するような軽度のものから、耳がただれてひどい痒みで夜も寝られないほどの重度のものまで様々です。 慢性化すると治り難くなって大変です。原因としては、最も多いのが酵母様真菌(マラセチア菌)の繁殖によるもので、酵母性外耳道炎と呼ばれます。 湿っぽい黒褐色の汚れと独特の発酵臭を伴います。 このマラセチア菌は、もともと健康な犬猫の体に普通に常在する菌ですが、いろいろな要因で、異常に繁殖しすぎると病気を引き起こしてしまいます。 マラセチア菌は、脂分を好み、高温多湿の環境で活発に増殖します。 ですから、皮脂の分泌の盛んな品種(キャバリアやシーズーなど)や垂れ耳の品種は通気性が悪くマラセチア菌が増殖しやすいといえます。 この酵母性外耳道炎が悪化すると、そこに細菌が二次感染し、細菌性外耳道炎に移行してしまうことがあります。 ここまでくると、耳道内は腫れて狭くなり、粘膜はただれ、耳を触ると痛がるようになり、強烈な腐敗臭を伴ってもう大変! こうなる前に何らかの処置を施してあげたいものですね。
オッドアイという名称をご存知ですか?オッドアイとは左右の眼の色が違うことを言います。 奇妙な眼という意味なんだそうです。オッドアイは通称で、正確にはHeterochromia of Iris(日本語で虹彩異色症)と言います。 猫(特に白い猫)で時々見られますが、原因はよくわかっていません。遺伝的疾患とも言われていますが、 基本的には突然変異で出現することが多いようです。もちろん犬にも見られますし、人にも起こり得る疾患です。 日本では古くからオッドアイの猫のことを「金目銀目」と呼んでいました。 確かに金目の方はカッパー(赤銅色)もしくはゴールド(金)ですが、銀目の方はシルバー(銀)ではなくブルー(水色)であることが多いようです。 ところで、このオッドアイの猫ですが、可哀想なことにブルーの目の方の耳が聞こえない子が時々います。 聴覚障害はオッドアイに限らず、両目ともブルーの子に出やすいとされていますが、 それは聴覚障害を起こす原因とされている白斑遺伝子がブルーの目を作る遺伝子の上にあるため、 優性遺伝である白毛と合体すると聴覚障害の遺伝子が出る、というメカニズムなんだそうです。
マウスの皮膚の細胞から、様々な臓器や組織に育つ能力を秘めた「万能細胞」を作り出すことに、 京都大学再生医科学研究所が世界で初めて成功しました。 ES細胞(胚性幹細胞)に似た性質を持つ、この万能細胞を人間や他の動物でも作ることが出来れば、 患者と同じ遺伝子を持つ臓器が再生でき、拒絶反応のない移植医療が実現可能となります。 山中伸弥教授と高橋和利特任助手により成功したこの実験は、米科学誌「セル」電子版に掲載されました。 この万能細胞はES細胞に近い能力があるとして「誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)」と命名されました。 写真はマウスの皮膚細胞から作成したiPS細胞の顕微鏡写真。島状の塊の中にiPS細胞が含まれています。 ES細胞は、受精卵や卵子を材料にして作成されるものであり、倫理的に問題があるとの指摘が根強いが、 iPS細胞は生殖細胞を使わずに作成できるので、そういった問題点を一気に解決してくれる夢のような研究と言えるでしょう。
赤い色の尿が出る、という主訴でウサギさんが診察に訪れました。 一口に赤色尿と言っても、本当の血尿(例えば膀胱炎や尿道炎、尿石症など)なのか、食事由来もしくはストレスによる赤色尿なのか、 はたまた卵巣子宮疾患なのか、あるいはこれらが同時に発生しているのかをしっかり鑑別する必要があります。 この子の場合、血液検査・尿検査・レントゲン検査・超音波検査などにより、子宮に異常があることが判明したため、 その日のうちに卵巣子宮全摘出手術を実施しました。かなり変形腫大した子宮は、病理検査の結果「平滑筋肉腫」と判明。 転移することは比較的まれであるとはいえ間違いなく悪性腫瘍。 子宮内膜増殖症も併発しており、血尿と思われたものは子宮からの出血だったことがわかりました。 手術でおなかがスッキリしたこのウサギさんは、10日後の抜糸時にはすっかり元気を取り戻していました。 3~4歳以上の雌のウサギさんは子宮疾患(特に腫瘍)に罹患する率が残念ながら結構高いように思われます。 特に腫瘍の中でも多くみられる「子宮腺癌」は、肺や肝臓および骨に転移してしまうこともあり、手術しても間に合わない、なんてことも・・・。 お産をさせる予定がないのなら、病気になってしまってからリスクを冒した手術をするより、 若くて元気なうちに「不妊手術」を受けておくことをおすすめします。