コラム - うさぎのおはなし -
何となく元気食欲が低下気味のウサギさんが来院しました。
血液検査で腎臓の数値が少し上昇しています。レントゲン検査の結
果、右の尿管に径約2mmの結石があることがわかりました。右の腎臓
は少し腫れています。
結石が小さいこと、腎臓へのダメージがそれほど大きくないこと、一般状態が深刻ではないこと、
などを考慮して、輸液による尿量増量で結石を移動させることを目的とした治療を開始しました。
ホモトキシコロジー製剤による疼痛の緩和および腎臓の保護も合わせて行いました。2週間ごとの血
液検査およびレントゲン検査で経過を追ったところ、結石は少しずつ移動し、8週目で完全に消失
(体外へ排泄)してくれました。
「ウサギの尿管結石 その1」でお話しさせていただいたウサギさんの場合は、結石が径約7mmもあ
り移動してくれる可能性が低かったこと、急性の腎後性腎不全に陥っていたこと、一般状態が悪
かったこと、などを考慮して、リスクは承知で緊急手術に踏み切らねばなりませんでしたが、今回
のウサギさんの場合は上記のような治療を試みる時間的余裕があったことも幸いしたようです。
ただし、どちらのケースも再発の可能性を十分考えておかなければなりません。「ウサギの尿管結
石 その1」での話の繰り返しになりますが、ウサギさんのカルシウム代謝は犬や猫と違って特異的
です。口から入ったカルシウムは消化管から無制限に吸収され、余った血清カルシウムは胆汁中に
排泄されずに、ほとんどが尿中に排泄されます。そのためにカルシウム尿結石は残念ながら比較的
よくみられる病気なのです。もちろん結石が出来やすい・出来にくいなどの個体差もあるでしょう
が、一度尿結石が出来てしまったウサギさんは、その後の食事内容には十分気を配る必要がありま
す。
ペレットはチモシー100%のものを選ぶ、牧草の比率を多くする、生野菜では大根の葉などのカルシ
ウム含有量の多いものを与えない、おやつの成分を吟味して少しでも疑いのあるものは与えない、
などの注意が必要です。
ウサギ蟯虫は5~10ミリくらいの半透明の細長い虫です。たくさん寄生していても特に症状が現れないので、便の中に虫が出てくるまで寄生に気づかないことがあります。普通の検便では検出されにくいので、蟯虫を疑う時は通常の検査だけでなく特別な検査が必要になり ます。特別な検査といっても、何も難しい検査ではありません。肛門にセロテープを貼って採材したものをスライドグラスに貼り直して、顕微鏡で虫卵を確認すればOKです。ウサギ蟯虫の寄生部位は盲腸や大腸。これらの虫は肛門から出てきて肛門周囲の皮膚に産卵するので、それをセロテープで回収して確認するのです(写真)。
産卵は昼間(夜行性の動物が本来眠っている時間帯)に行なわれるので、昼~夕方の間に採材すると見つけやすいでしょう。フェンベンダゾールや イベルメクチン、ドラメクチンなどが駆虫薬として用いられますが、食糞行動で再感染を繰り返すので、場合によっては複数回の投薬が必要になります。
排尿姿勢はとるが、排尿がほとんど見られないというウサギが来院。
レントゲン検査で尿道に大きな結石が詰まっていることが確認されました(写真)。手術で取り出したのはウサギに最も多い炭酸カルシウム結石。ウサギではカルシウムの排泄のほとんが尿から行なわれます。犬猫ではカルシウムの尿中への排泄が2%以下であるのに対してウサギではそれが45~60%にも達するそうです。
つまり、ウサギは常にカルシウム系の結石が出来やすい状況にあるということです。 カルシウム系の結晶には尿酸性化剤は効果がありませんから、出来てしまった結石に対しては、外科的な処置しか選択の余地がありません。結石が出来ないような予防が大切だということですね。予防的には、低カルシウムのチモシー100%フードに切り替えたり、飲水量を増やしたりすることが大切です。飲水量を増やすといっても、水だけをたくさん飲んではくれませんから、生野菜を少し多めに与えるなどで対処すればいいでしょう。ただ、この場合も、大根の葉・カブの 葉・小松菜・モロヘイヤなど、カルシウム含有量の高い野菜は与えないような注意が必要ですよ。
食欲・元気が全くなくなってしまったウサギさんが来院しました。
血液検査で腎臓の数値が大変なことになっています。レントゲン検査の結果、右の尿管に径7mmもある大きな結石が詰まっていることがわかりました。右の腎臓はかなり腫れてしまっています。
このウサギさんは急性の腎後性腎不全に陥っていたので した。尿管から結石を取り出す緊急手術を行い、何とか事無きを得ましたが、再発の可能性も十分考えておかなければなりません。ウサギさんのカルシウム代謝は犬や猫と違って、特異的です。口から入ったカルシウムは消化管から無制限に吸収され、余った血清カルシウムは胆汁中に排泄されずに、ほとんどが尿中に排泄されます。そのためにカルシウム尿結石は残念ながら比較的よくみられる病気なのです。もちろん結石が出来やすい・出来にくいなどの個体差もあるでしょうが、一度尿結石が出来てしまったウサギさんは、その後の食事内容には十分気を配る必要があります。
ペレットはチモシー100%のものを選ぶ、牧草の比率を多くする、生野菜では大根の葉などのカルシウム含有量の多いものを与えない、おやつの成分を吟味して少しでも疑いのあるものは与えない、などの注意が必要です。
①耳介の静脈②耳介の動脈③橈側皮静脈④サフェナ静脈⑤頚静脈などが一般的です。通常は耳介の静脈が選ばれるケースが多いようです。
その理由としては、血管が見やすいことと、診察台の上でウサギを自然な形で保定しやすいことなどが挙げられます。ただ、検査に必要な十分な量を採血するのが難しいことや、止血をしっかりやっておかないと内出血の跡が目立つこと、止血のためにしばらく耳をおさえられるのを嫌うウサギがいるなど、利点ばかりではありません。
当院では数年前から④のサフェナ静脈(下腿部の外側にある血管)からの採血を行なうようにしています。この方法は保定者の技術が大切になってきますが、コツを覚えてしまえばそんなに難しいものではありません。何より検査に必要な十分な量が簡単に採取出来ることが利点です。
慣れてしまえば時間をかけずにさっと採血を終えることが出来るので、ウサギにかかるストレスも最小限で済みます。