コラム - ハムスターのおはなし -

2009年8月3日

20090803お尻が汚れているというハムスターが来院しました。見ると確かにお尻の周囲や尻尾が湿って汚れています。俗に言う「ウェットテール」の状態です。

ウェットテールはほとんどの場合、下痢が続いていることを示しています。案の定、便検査で「ジアルジア原虫」(写真)がたくさん検出されました。ジアルジア原虫は 小腸に寄生し、脂肪の吸収を妨げるので、主に脂肪性の下痢を引き起こします。成長期のハムスターでは栄養障害や脱水により、場合によっては生命の危機に陥ることもあるので、しっかりした治療を施さねばなりません。

 

基本的にはフェンベンダゾールやメトロニダゾール、プロバイオティクスなどの内服薬を用いますが、脱水緩和のための皮下補液が必要な場合もあります。いずれにしてもハムスターの「お尻が汚れている」状態はけっして好ましい状態ではないことを十分ご理解下さいね。

2008年11月18日

20081118上まぶたが腫れているハムスターが来院しました。

白いニキビのようなできものがみられます。これは、まぶたの内側にあるマイボーム腺という脂の分泌腺の開口部が炎症を起こしたり詰まったりした結果、分泌されなくなったものが貯留して腫れてしまっている状態です。症状がもっと軽いうちは抗生物質の点眼液で様子を見ることもありますが、ここまで大きく腫れてしまうと麻酔下での切開・搾り出し処置が必要になります。

 

注射針の先端で小さく切開し、鉗子かピンセットの先で搾り出してあげればOKです。

2008年3月22日

20080322顔が腫れているというジャンガリアンハムスターが来院しました。

頬袋をひっくり返してみると丸い塊(黄色の矢印)が見えます。検査の結果、これは膿瘍であることがわかりました。いわゆる「頬袋膿瘍」です。これは頬袋に食物を詰め込むハムスターの性質上どうしても起こり得る病気です。原因としては、先端が尖った硬いものを詰め込むことによって頬袋粘膜を直接傷つけてしまうこと、詰め込んだまま狭い小屋に潜り込む際にこすれて頬袋が傷つくこと、詰め込んだ食物が頬袋内で腐敗してしまうことなどが考えられます。

 

ほとんどの場合は化膿臭で診断がつきますが、口角にある臭腺から分泌される臭い(興奮時に出る)と間 違えないように注意しなければなりません。抗生物質投与などの内科的な治療ではほとんど完治には至らないので、外科的な切開&排膿が必要になってくるで しょう。

2008年1月7日

20080107「ねずみ年」がスタートしました。ねずみは「げっ歯類」に属します。

今年はハムスターやスナネズミなどといったいわゆる「げっ歯類」を飼育してみようかなと思う方が例年より多くなるかも知れませんね。小さくて見た目も可愛いげっ歯類は広い場所を必要とせず、騒音や悪臭に悩むことも少なく、価格も手頃で飼育 も比較的難しくないために、初めて飼う方でもスムーズに入っていけるのではないでしょうか。ただし、げっ歯類のうちハムスターなどごく一部を除くと、その大半は野生動物であるという点に注意しなければなりません。

 

世の中の流行や外見の可愛さで衝動的に野生げっ歯類を飼うことはあまりおすすめ出来ません。概してペットとしての飼育の歴史が短い動物や、ペット以外の目的で飼育されてきた歴史の浅いもの、飼育頭数の少ないものに関しては、人獣共通感染症について全てわかっているとは言い難いからです。また、お店で扱っている全ての動物に対して獣医師が診療可能なレベルまで知識や技術を習得することは非常に困難であり、特殊なげっ歯類の場合は病気になってしまった時に診療が受けられないなどの悲劇が生じることも起こり得ます。

げっ歯類をペットとして飼う時は、飼育ノウハウがしっかりと広く一般に浸透しているもの、人獣共通感染症についてよく知られているものなどを選ぶべきでしょう。さらに、診療対象としている病院が近くにあるか否かなども考慮すべきでしょう。

2007年8月13日

20070813ハムスターの骨折は後肢に起こることが多く、何となく動きが鈍い、跛行しているといった主訴で来院するケースがよく見られます。

ただし、中には骨折していてもまったく気にせず軽快に動き回るハムスターもいるので、発見が遅れてしまうこともしばしばあります。後肢の骨折の中でも特に多いのが下腿骨(脛骨)の骨折で、その場合は跛行というよりも足がブラブラしてしまい、長時間そのままで動き回っていると、折れた骨が筋肉や皮膚を突き破って出てきたり、骨折部より下がねじれて壊死することもあります。

その場合は断脚せざるを得ません。写真のハムスターは骨折部より下がミイラ化してしまったため、膝関節のところで断脚を行ないました。ハムスターの骨折の原因としては、回し車に足を挟んだり、ケージの網床に足をとられたり、出入り口で足を挟んだり、天井にぶら下がっていて落下したりなど、ケ-ジや備品の問題で起こることがまず考えられます。また、誤って踏んだり、持っていて落としてしまったりなど、人間の不注意でも起こり得ます。つまり、すべては飼育管理の問題に行き着くわけです。

不幸な事故を防ぐために、普段から注意深い観察ときちんとした飼育管理を心がけるよう にしましょう。