コラム - 猫のおはなし -
聞けば、庭によく来る野良猫なのですが、しばらく姿を見せないなと思っていたら、今朝こんな眼になっていたんだそうです。やっとの思いで捕獲して連れて来たとのこと。
よく見ると角膜の矢印の部分に傷跡があります。他の猫とケンカでもしたのでしょうか。かなり時間が経過して角膜潰瘍になっています。角膜に傷がついたまま放っておくと、傷の部分から水分が角膜に浸潤して、強い混濁が生じてしまうのです。治療のために瞬膜被覆術を施したまでは良かったのですが、何しろ野良猫なので、何をしようにも大暴れで抵抗します。大変な管理でしたが、鎮静剤を使いながら約3週間頑張ったところ、努力の甲斐あって何とかキレイな眼に戻ってくれました。
昨日までは普通だったのに今朝から何だか様子がおかしいとのこと。聴診で肺の音がよく聞こえません。レントゲン検査で、胸腔内に空気が充満していて、肺が縮んでいる様子が観察されました。「気胸」です。
肺のどこかが傷ついて空気が胸腔内に漏れ出しているのです。緊急処置として、まずは翼状針を用いて胸腔穿刺を行い空気を除去しました。いったん猫ちゃんは落ち着きましたが、しばらくして再び呼吸困難に陥ったため、今度は胸腔内にチューブを設置して持続的に空気を除去する方法に切り替えました。
もしこの状態が数日続くようなら開胸手術が必要なところでしたが、 幸いこの子は2日目には胸腔内に空気が溜まらなくなり、呼吸も安定していたので3日目にチューブを抜いて退院することになりました。この猫ちゃんはその後再発もなく元気に過ごしています。気胸の原因としては、他の呼吸器の病気(肺炎・気管支炎など)によって起こる場合や猫ちゃん同士のケンカ・外部からの圧迫・交通事故等が挙げられます。何らかの形で肺が傷つくことによって起こるのです。
今回はどうやら同居猫と激しく遊んだ後に発症したようです。猫ちゃんを複数飼育している方は注意して下さいね。仲良し同士であってもあまり激しい遊びは控えた方が良さそうですよ。
耳と鼻のあたまにかさぶたを伴った赤いボツボツが出来てしまった猫が来院しました。かなり痒そうです。
聞くところによると夏場は毎年このようになってしまうとのこと。生検の結果、「好酸球性プラーク」と診断されました。「好酸球」というのは血液の中の白血球の一種で、主に寄生虫などから体を守る役割を持っており、さらにはアレルギー反応の起きている場所へ急行するという任務も担っています。
猫ではこの好酸球が皮膚に集まって特徴的な病変を作ります。そのひとつがこの好酸球性プラークです。
「プラーク」とは脱毛して湿った,平らにやや盛り上がった広い部分で丘のようなもので、つまりかさぶたを伴った赤いボツボツができてしまった丘疹が好酸球性プラークです。通常は副腎皮質ホルモンを投与すると良くなるのですが、アレルギーの原因を取り除かないと再発してしまいます。この猫も何回か再発を繰り返しました。聞くところによるとしょっちゅう屋外へ脱走してしまうとのこと。 夏場に発症することから、蚊によるアレルギーの可能性を考えて(ノミは予防済みなので)、脱走されないようにして室内のみで蚊を遠ざけて管理して貰ったところ、すっかりきれいに治りました。
この事業は、飼育される見込みのない子犬や子猫を増や さないために、手術費用の一部を横浜市と(社)横浜市獣医師会が助成するものです。
健康な犬と猫(野良猫含む)あわせて2500頭を対象に、不妊・去勢手 術料金の一部(5000円)が補助されます。
つまり、横浜市獣医師会所属の動物病院で不妊・去勢手術を受けるとその場で支払う金額から5000円が割引かれるということです。
区役所生活衛生課窓口で6月2日(月)から申し込み受け付けが始まっていますので、手術をお考えの方はこの機会をお見逃しなく。
①年齢20歳以上の横浜市民が手術費用の助成を希望する犬又は猫(ノラ猫含む)であること
②手術実施時に、生後6ヶ月以上で健康であること
③犬は登録及び平成20年度狂犬病予防注射が済んでいること(未登録、未済の場合、対象外)などが
対象条件となりますのでご注意下さい。
また、申し込み時には運転免許証や健康保険証などの住所入りの公的身分証明書が必要です。
詳しくは当院スタッフにお尋ね下さい。
狂犬病ワクチン接種やノミダニ予防駆除剤の投与、さらにはフィラリア予防のための検査&投薬もそろ そろ始まっています。混合ワクチンもこの時期になっている子もいるでしょうし、ワンちゃんにとっては何だかとても慌しい時期ですよね。各種予防をきちんと受けるためにはまず健康であることが大前提ですから、体調管理には十分気をつけるようにして下さいね。
ところで、フィラリアはワンちゃんだけでなく実は猫ちゃんにも感染することをご存知でしょうか。猫ちゃんは犬フィラリアの感受性宿主であり、ワンちゃんの感染がみられる地域では、罹患率はワンちゃんに比べ低いとはいえ、蚊に刺されれば同じように感染してしまう危険があります。困ったことに猫ちゃんがフィラリアに感染しているか否かは血液検査ではほとんど判定できませんし、また臨床症状が特異的でない(嗜眠、食欲不振、嘔吐、発咳、呼吸困難、失神、あるいは無症状)こともあって、意外と見逃されてしまっているケースが多いのです。感染に気づかずにいると、いきなり重篤な急性肺障害に陥ったり、突然死を呈する場合もあるので、そういった点ではむしろワンちゃんのフィラリア症より怖いかもしれませんね。
猫ちゃんもワンちゃんと同じようにフィラリア予防を考えてあげてはいかがでしょうか。
予防薬としてはお肉タイプ(内服薬)とスポットタイプ(皮フ滴下薬)がありますので、詳しくは当院スタッフにおたずね下さい。